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分散型の理念を追求した暗号通貨の意義
現在、世界には数百種類を超える暗号通貨(仮想通貨)が発行されており、こうしたビットコインに続く暗号通貨のことをアルトコインと呼びます。
今回はその中から、イーサリアムクラシック(Ethereum Classic)の特徴、そして今後の展望について分かりやすく解説していきます。
イーサリアムクラシックとは
イーサリアムクラシックとは、イーサリアムから分裂して登場した暗号通貨のことです。イーサリアムクラシックは現在も活発に取引されているだけでなく、2017年2月にはイーサリアムクラシックを用いたハッカソンが開催されるなど、独自の発展を遂げている過程であるとも考えられます。
イーサリアムクラシックの特徴
イーサリアムクラシックが生まれた契機は、イーサリアムを利用したプロジェクトであるThe DAOのスマートコントラクトコードの脆弱性を突いて、当時の金額で約65億円相当のイーサリアムが不正に送金された「The DAO事件」と呼ばれる事件です。これに対し、イーサリアム開発チームは「ハードフォークによって不正送金が行われる前の状態に戻す」という手段を取ることで解決を図りました。そして最終的には、コミュニティの約90%がこれに賛成し、ハードフォークが実行され、イーサリアムの不正送金は無効化されました。
しかし、この対応が中央管理的な介入であるとして、あくまで非中央集権的な暗号通貨を目指すコミュニティの一部が反発し、ハードフォークを拒否しました。その結果生まれたのが「イーサリアムクラシック」です。
イーサリアムクラシックのメリット
良好な取引環境
ハードフォークが実行された2016年7月20日以降、イーサリアムクラシックはイーサリアムとは別のブロックチェーンに記録されています。しかし両者は元々一つの暗号通貨であるので、スマートコントラクトなどの基本的な機能は同一であり、両者に大きな差異はありません。
またイーサリアムを所持していた人は、ハードフォークに伴って同額のイーサリアムクラシックを手に入れました。新たな暗号通貨でありながら、生まれながらにして多くの人が保有することになったのです。ハードフォーク後にはPoloniexを始めとした大手取引所がイーサリアムクラシックに対応し、取引環境も比較的早く整いました。
イーサリアムクラシックのデメリット
イーサリアムクラシックはイーサリアムとの差異が小さい以上、イーサリアムの価格変動の影響を受けたり、逆にイーサリアムの価格に影響を与える傾向にあります。
実際にイーサリアムのマイナーと流通量がハードフォーク前に比べると減少したことで、イーサリアムの価格が一時下落したため、ハードフォーク直後はイーサリアムコミュニティとイーサリアムクラシックコミュニティの間で激しい対立が起き、これが双方の価格に影響するといった事態も生じていました。
イーサリアムクラシックの普及と今後の可能性
イーサリアムクラシックはその誕生の経緯から、本来の分散型システムとしての理念を重視する層からの支持を集めています。クラシック派はコードを絶対視する「コードこそが法(Code is law.)」という理念の下に非中央集権性を追求しており、「コミュニティの多数決による合意形成」と「コードに則った合意形成」のどちらを重要視するかという非常に難しい問題提起に繋がっています。
一方で、ブロックチェーンのフォークのリスクという観点からも非常に興味深い事例であると言えます。同じような事例として、現在ビットコインはSegwitと呼ばれるフォークを予定していますが、一部から反発を受けてフォークを拒否する「ビットコイン・アンリミテッド(Bitcoin Unlimited)」と呼ばれる派閥が生まれてしまっている状況です。これらのように議論の分かれるフォークでは、分裂の危険性が十分に存在することを示していると言えるでしょう。
*2017年1月13日 出典:BLOCKCHAIN BUSINESS COMMUNITY